クワクサ クワ科
1年草。本州〜沖縄に生育します。北海道のものは国内移入種になります。
クワによく似ているのでクワクサという名前がついています。今は、クワを知らない人が多いのですが、私が生まれた家の2階には、カイコを育てる部屋がありました。クワはカイコの餌として畑で栽培していました。私にとってはクワは身近な植物でした。もう60年ほど前の話です。
全てクワの葉。大きな木になったものには右のようなものは葉は非常に稀だった。
中央がクワクサ。両端がクワ。確かにこの形だとよく似ている。
私はこの植物の写真を撮っていました。しかし漫然と撮っていたんですね。この記事を書くにあたって痛感しました。
取材のスタートは我が家です。庭先に高さが10cmをわずかに越えるような小さな個体が花を咲かせています。これではあまりにしょぼいです。
もっといいのを撮ろうと円山川の堤防に向かいました。そこにクワがたくさんあるのを知っていたからです。クワのついでにクワクサも撮ろうという作戦です。
クワはすぐに見つかりました。しかし、困ったことがあります。円山川の桑の木の葉はどれもこれも切れ込んでいてクワクサの葉とは似ていないのです。2kmほど歩いて、帰路について、ようやくそれらしい葉が見つかりました。
実はもっと困ったことがありました。堤防にも農道にもクワクサが1本もないのです。まさかの展開でした。図鑑には、「本州〜沖縄の道ばたや畑、荒れ地などに多い。」と書かれています。「図鑑は嘘つきだ。道ばたにはないぞ。」と思いました。
集落に入って、人家が増えてくるとクワクサが出てきました。収集ゴミのボックス、防草シートの隙間、車庫の横、人臭いところにやたらと生えています。クワクサは、私の住むところでは人家の近くに多いのです。
次の日は、人家の近くを集中して歩きました。ありました、ありました。なんか逆ですがクワクサそっくりのクワもありました。あと2mほど近ければ1枚の写真に収まったのにという場所もありました。確かにクワクサはクワに似ています。
クワクサと思って近づくとクワでした。すぐ近くに少し小さなクワクサがありました。
白い部分、突き出した棒のようなもの、分かりますか?
クワクサの花は、同じ花序に雌花と雄花が同居します。白いものが出ていたら雄花で、赤紫の棒状のものが出ていたら雌花です。雄花の方は花びらが開きます。開くときに雄しべが飛び出して花粉が出るのだそうです。一方で、雌花は、花びらが開くことはなく隙間から雌しべが出てくるのだそうです。