ジャノヒゲ(リュウノヒゲ) キジカクシ科
今年は何度も雪が降っては融けてを繰り返しています。今回の記事は、冬越しの植物たちのロゼットの話だなと思って外に出ました。
赤く染まったスイバなどがありました。何種類か撮っていると。ジャノヒゲがびっしりと生えているところに出会いました。
ジャノヒゲは、地面に張り付くように生えている常緑の多年草です。多くの場所では、冬になるまでは、背の高い植物たちに隠されて見えません。一度気づくと至る所の法面や水路の上の方に生えているのが目に入ります。かき分けてみると中に青い実がついていました。果実だと思っていましたが、これは実(果実)ではなく種子なのだそうです。それにしても肉厚の分厚い種皮ですね。
私はこの辺りに、沢山のジャノヒゲが生えていたことをすっかり忘れていました。
子どものころは熱心にジャノヒゲの実(種子)を探しました。飛ばして遊ぶためです。
小学校4年生の理科に「空気鉄砲」という教材があります。透明な円筒形の筒の両端にスポンジ球を詰めて棒で押して飛ばすというものです。子どもの頃の遊びでは、細い竹の筒にスポンジ球のかわりにジャノヒゲの種子を詰めて飛ばしました。種皮が1mm近くあって、この厚い皮が潰れて筒の壁にくっつき、空気が漏れないようになります。なので、よく飛びます。当たると痛かったのを覚えています。球を撃った瞬間に筒の先から白い煙のようなものを吐き出して、ほれぼれとしたこともありました。もう必死になってポケットいっぱいに青い実を集めたものです。
鉄砲の筒の竹ですが、当時は「てっぽうだけ」と呼んでいました。ジャノヒゲの種子の直径が1cm弱なので、メダケでは太すぎます。太いネザサの仲間だったのでしょうか? もっと太いのでは水鉄砲を作ったのも覚えています。
年上の人達に連れられて竹を取りに行き、鉄砲は自分たちで細工をして作りました。小学生だけで、鎌を持って山の中に入って竹を切り、刃物を使って作っていたのですから時代の違いを感じます。
もう50年以上前になります。ジャノヒゲの存在を忘れていても無理はないのかもしれません。
ジャノヒゲはリュウノヒゲとも言います。タマリュウ(玉竜)は、ジャノヒゲの矮小種になります。ジャノヒゲもタマリュウもグランドカバープランツとして園芸店で売られています。
畦畔や畑の法面には大量のジャノヒゲが見られます。これは、昔の人が植えたのだろうと思います。近年、雑草抑制を確かめる実験もされていますが、抑草効果が高いとは思えません。我が家の前は、年間3回ほどの草刈りがされてチガヤ草原が維持されていますが、冬にならないとジャノヒゲは見られません。昔の人は、畦畔の崩壊を防ぐ土留めの働きを期待していたのではないかと思っています。
ジャノヒゲの根の膨らんだ部分は生薬「バクモンドウ」と呼ばれます。鎮咳、止渇、去痰などの作用があるそうです。麦門冬湯(ばくもんどうとう)、竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)などに配合されているそうです。
写真を撮った次の日から大雪でジャノヒゲはすっかり雪におおわれてしまいました。雪解けが待ち遠しいです。