あれ? 畑じゃないのにソバが生えていると思ったことがありませんか? それは、ソバではなくシャクチリソバです。シャクチリソバは、栽培されているソバによく似ています。また、稀に栽培されているダッタンソバにもよく似ています。特にダッタンソバとは近縁で、ダッタンソバの野生種は70万年前にシャクチリソバから分岐したと言われています。
シャクチリソバは、インド北部から中国南部を原産地とする多年草です。原産地にちなんでヒマラヤソバとか一年草のソバと異なり多年草であることから宿根ソバという異名もあります。
原産地では、伝統的な薬用植物として知られています。若い葉や茎を食べることはありますが、種子が簡単に落ちてしまうことから種子を食べる習慣はありません。日本では、昭和初期に東京都小石川植物園で栽培されてから、各地の植物園や薬草園で栽培され、やがてそこから逃げ出したものが各地に広がりました。
シャクチリソバは、ソバに比べると湿潤な環境を好み、河川敷を中心に大規模に生育しています。但馬の各所で見られますが、特に円山川の中・下流域では大規模な群落が各所で見られます。攪乱によって増えやすい性質を持っているので河川敷はシャクチリソバには好適な環境になります。日本にやって来ているシャクチリソバは地下にある塊茎が肥大します。洪水で塊茎一部が流されてきても再生される強い植物です。もちろん種子でも増えるので河川敷で増えているのは納得です。
中国では「金蕎麦」、「天蕎麦」とも呼ばれ、薬理成分の一つであるルチンには高血圧や脳出血の予防する薬理作用があります。原産地では、胆石や女性の病気に効くとされている場所や下痢や胃腸の消化不良、咳、リュウマチに効くとされている場所や皮膚病に効くとされている場所があり、大変有用な植物だと思われています。中国では、薬効成分が高く評価され、乱獲で激減して保護植物になっています。日本では、ルチンを取るために盛んに栽培された歴史もあるようですが、近年では、急速に栽培が減少し、やっかいな外来植物として駆除の対象にもなっています。
ネットで調べてみると食用に関して様々な試みがなされていますが、ほとんどが葉の利用です。ペーストを練り込んでそばを打つ、青汁にする、青汁を生地に練り込んでパンを焼く、お浸しにする、わさび和えにする、天ぷらにするなどです。わずかに実を粉にひいてそば粉に混ぜてそばを打つというものもありました。葉はおいしくて薬効成分も含まれていますので、高血圧の私としましては、次の春に試食から始めようと思います。
今回の記事は、山根京子.野生化した薬用植物シャクチリソバ.栽培植物の自然史Ⅱに全面的にお世話になりました。勉強になりました。やはり本はとりあえず買っておくものだなと思いました。