オオマルバノホロシ ナス科
野菜を作ったことのある方ならこの花はナスに似ていると思われることでしょう。
この植物、オオマルバノホロシは、ナスと同じSolanum属の植物です。でも、実はナスには似ていなくて、赤い超小型の卵形ミニトマトのようになります。ちょっとおいしそうにも見えますが、有毒だとされています。ナス科には猛毒の植物が多いので、どれくらいの効果があるのか試してみるわけにもいきません。
このオオマルバノホロシは、かつては本州中部以北と北海道に生育すると言われていましたが、近畿地方(滋賀県、京都府、大阪府)にも生育することが知られるようになり、その後、広島県や島根県でも生育が確認されました。
兵庫県では、1990年に始まった国土交通省(当時は建設省)の河川水辺の国勢調査で初めて確認されました。見つかったのは、円山川の下流域のごく狭い範囲でした。兵庫県にはここにしか生育しません。以後、定期的に見て回っていますが、立野橋からひのそ島までの6kmばかりの間にあるヨシやオギの原野の中に簡単に数えきれそうなくらいにしか生育していません。絶滅寸前といってもよい生育状況です。
兵庫県版レッドデータブックでは、場所が隠されていますが、この植物を盗掘する人がいるとは思えません。むしろ公表して関心を持ってもらった方が守れると考えています。国土交通省には、河川工事のたびに可能な限りの配慮をしていただいています。
オオマルバノホロシの調査は、5月中旬くらいまでに行います。それ以降になると周りの植物が育って見つけにくくなる上に、移動するときの抵抗が増えて調査のための歩行が困難になってきます。5月の調査では、生育地は簡単に見つかります。その時にGPSでポイントを落とすのですが、私の機種では数mの誤差があります。花や実の写真を撮りたくて夏や秋にもGPS片手にポイントを目指しますが、下がぬかるむ中で、2m近く育ったオギやヨシをかき分けながら再訪することは、たとえ数mの誤差であっても難しいものがあります。
花はよくつけると思います。9月くらいに見に行くと大概出会えます。でも、実にはなかなか出会えません。円山川では、実が外れやすいのかもしれませんが、出水のあった年には実を見たことがありません。
この植物の栽培は難しくありません。一度、雪の残る春先に見に行くと、雪の中に赤い実がつぶれて残っていました。その中の種をまくと簡単に育ちました。また、茎を挿すとこれも簡単に育ちました。
円山川では、ヨシとオギの境目のような場所、ヤナギ林の周縁、ゴミが大量に堆積して裸地になったような場所でよく見かけます。半ば蔓のようになって、ヨシやオギにもたれかかって上に伸びています。多年草なので、一度、定着するとすぐには絶えないようです。円山川では定期的にヤナギを伐採していますが、そのときの攪乱が適度なようで、この種を含めた原野の植物の生育にプラスに働いているように見えます。
オオマルバノホロシは、兵庫県を含む12の府県で絶滅危惧種に指定されています。
流域の小学校で栽培して保全してほしい植物の一つです。