イタモジホコリは変形菌を代表する種の一つと言って良いかもしれない。その理由は、飼いやすいので多くの愛好家が飼育している変形菌だということである。イタモジホコリは図鑑ではやや普通に見られる種と書かれている。私の少ない観察経験でもすでに何度か出くわしており、珍しい種ということは考えにくく、その辺に普通にいるわけではないものの、「やや普通」という表現はぴったりだと思う。
変形体は黄色~レモン色で目立ち見つけやすい。一昨年の5月にコウノトリの郷公園で行った観察会で、日本変形菌研究会の会員である枡岡氏が「こういう所にいるんですよ」と、朽ちたシイタケの榾木をひっくり返したところ、すぐにこいつが見つかりとても驚いたことがある。小さなサルノコシカケ類に食いついていたのを連れて帰って飼育してみたら、とても飼いやすくてどんどん増えていった。子実体を形成したのでその形態を見てみると図鑑でみたイタモジホコリそのものであった。かわいがっていたのに、夏が来ると温度管理をしていないので高温に耐えられず、可哀そうに室温が40度以上になってしまい死亡してしまった。可哀そうなことをした。
図鑑では子嚢はレンズ形で上面はしばしばへそ状と記載されているが、レンズ形というのであれば横断面は紡錘形というか、紡錘形の端を切り落としたような形に近いことになると思うので、レンズ形という表現は正確ではないと思う。どちらかというと饅頭の上面を押しつぶして、中央部をへこませたような形である。
変形体はアメーバ状で1時間に数㎜~1㎝程度ゆっくりと移動する。眺めていても動いているようには見えないが、しばらく置いておいて思い出して見てみると大きく形を変えている。
キノコが大好きで、エノキやエリンギをやると、大喜びしているのが分かる。大急ぎで移動してきて覆いかぶさっていき、自らの体積がどんどん大きくなっていく(数時間から数日の時間感覚での話であるが。)。増えていくと飼育箱が小さくなるので、箱を増やして行かなくてはいけなくなる。餌のオートミールやキノコの食いカスや排泄物らしき残存物をキッチンペーパーごと取り替えてやる必要もあるし、日々のお世話が結構大変である。二日も放っておくと、環境が悪化し、明らかに機嫌が悪い感じになり悪臭を発するようになる。しっかりお世話をしてやるとどんどん増えていく。やがて一生懸命お世話をすることは飼育箱が増えていきやがて労力的にもスペース的にも限界がきて、変形菌を飼育するというシステムが崩壊してしまうことに気が付く。そのため私のような横着な人間は飼育し続ける意欲が減退し、徐々に変形菌の生活環境も悪化してしまい、可哀そうなことになってしまう。
未熟な子実体