ノウタケ
7月上旬、変形菌の調査をしているときに、きれいなノウタケを見つけた。
頭部と柄部からなる。径7~15㎝の扁球形の頭部の表面は、茶褐色を呈するビロード状の細網を有し、脳状のしわがある殻皮に覆われる。
この外見が、脳の標本のように見える。このことが和名の由来だろう。
今回見つけたノウタケは、この脳状の外見的特徴がよく表れていると思う。
グレバ(子実体の内部で胞子を形成する組織)は若いときに白いが、液汁を染み出して、やがて褐色となる。 写真は翌週の状態。
乾燥するにつれて殻皮は次第に剥離し、グレバ自身は綿くず状の塊となり、やがて崩壊、脱落、そして胞子を拡散させていく。
最終的には独楽形海綿状で弾力のある柄部だけが残る。 写真はさらに翌週以降の状態。
内部が白く若いものは食用になる。またホコリタケの仲間には深刻な毒キノコは知られていない。
ウィキペディアによると、「ホコリタケ類の中では最も美味とされるが、その特異な外観からキノコ狩りの対象になることはあまりない。非常にいいダシが出るため、中華スープの具に用いると美味であるという。」と記載されている。私は食べたことはないので何とも言えないが、興味深いことである。
しかし、若い良質なノウタケに、しかもそれなりのまとまった量に出会ったことがないので、いまだに食べたことはない。
今回の分類も北隆館の「新分類キノコ図鑑」に従った。ノウタケ属はハラタケ目ハラタケ科ということのようである。 写真は別個体
ノウタケというキノコについて、私はこれまで腹菌類の代表的な種として認識していたが、近年の分類学の進展により腹菌綱は解体され、ノウタケ属はハラタケ綱ハラタケ目ハラタケ科に分類されてしまっている。従来の分類は外見的な特徴からも分かりやすかったのだが、新しい分類はなかなか分かりにくい。 写真は別個体
ノウタケ属は、いかにもキノコらしいツクリタケ(マッシュルーム)などを含むハラタケ属と同じハラタケ科ということだそうである。DNA的にはそうなのかもしれないが、やはり分かりにくい。 写真は別個体