ヒトヨタケ科のナヨタケ属、これと言って特徴のないグループだと思う。カサと柄を持ち、明確なツバやツボはない。小さくて発生時期も長く、世界的に分布するものが多い。腐朽菌でおおむね群生。同一種でも大きさや色など外見上の幅が大きい。つまり同じようなキノコがたくさんあり、同定がなかなか難しいグループと言える。
ナヨタケ属には、イタチタケ、ムジナタケ、ムササビタケと獣の名前が付いたものが3つもあり、よく似ている。さらに、イタチタケの仲間にはアシナガイタチタケ、ウスベニイタチタケ、ハイイロイタチタケといった名前も見られる。カサの径は概ね5センチほど、皮膜の破片がカサの周縁についている、これらはこのグループ共通して見られる。
ムジナタケは、表面が繊維状鱗片に覆われ少し雰囲気が違う。乾燥するとカサの表皮内部に空気が入り白くなる、これはイタチタケもよく見られる。放射状のしわがある点はムササビタケの特徴のようだ。写真のものはシワが明確で、特に幼菌で激しい。また、ヒダは若い時から灰褐色で成熟すると暗褐色となる。イタチタケは若い時は白色であり、この点からもイタチタケではないようだ。以上より写真のものはムササビタケと同定した。
カサの色合いや、シワっぽい質感、少し白が入るところなど、言われてみればムササビの感じかもしれない。和名にムササビがつくのは菌類・植物含めても本種だけのようである。
食毒であるが、1968年発行の図鑑「キノコ全科」(家の光協会)では「これといった特色はないがいかにもキノコらしい平凡な味、脂肪質の料理にみあう。」と記載されている。1994年発行の図鑑「きのこ」(山と渓谷社)では「食」、2002年発行の「食べられるキノコ200選」(信濃毎日新聞社)でも紹介されているのだから立派な食菌と言える。
しかし、2008年発行の「よくわかるキノコ大図鑑」(長岡書店)では「今のところ毒はないといわれているが食用の価値はない」と評価されており、最近のネット情報を全体的に見ると、「可食であるが、よく似た毒きのこもあるので、食べないほうが良い。」との見解が多いようだ。