もう夏のことになりますが、海中を進んでいると、砂底に何かが這ったような跡を見つけました。よく見ると、足跡のような形が連続しているのがわかります。
周辺を探ってみると、この「足跡」の主を見つけました。この画像の真ん中にいるのがわかるでしょうか。砂底に半分ほど潜り込んでいます。
頭部を拡大してみます。真ん中あたりに眼があるのが見えます。
砂の中から飛び出してきました。隠れ切れないと判断したのでしょうか。不思議な形をした生き物です。
しばらくして着底しました。砂に潜らなかったので、全体の姿を撮ることができました。この葉っぱのような形をした生き物は、カレイやヒラメの仲間のクロウシノシタという魚です。ウシノシタの仲間も種類が多いのですが、このような浅瀬にいるのは、まずクロウシノシタです。名前の由来は、姿そのもの。「牛の舌」に似ているためです。別名「シタビラメ」と呼ばれています。但馬では「クツゾコ(靴底)」という呼び名をよく聞きます。その名のとおり、砂底に残した跡は本当に足跡のような形です。沿岸の浅瀬や内湾の砂底に棲んでいます。海水浴場でも、少し岸から離れた所にいることもあります。海水浴やスノーケリングで見つけた方もあるかもしれません。もし1枚目の画像のような「足跡」を見つけたら、探してみると見つかるかもしれません。
口まわりにヒゲのようなものがある事と、側線が3本。クロウシノシタの特徴です。動物食でして、小さなエビやゴカイなどを食べています。
こちらは川の生物調査で採集したときの画像です。とある川の河口付近で、タモ網で採集しました。海だけでなく、川の河口周辺にも入ってきます。
まだ夏は遠いですが、海水浴シーズンになると、泳ぎながらクロウシノシタを探してみてはいかがでしょう。
写真・文 コウノトリ市民研究所 北垣和也