イソヒヨドリは、かつては磯を中心に生息するヒヨドリのような野鳥というこで、その名をもらいました。まず、ヒヨドリの仲間かと言えば、それは違います。イソヒヨドリはツグミの仲間です。ツグミの仲間は、いまはヒタキ科に分類されますので、イソヒヨドリはスズメ目ヒタキ科の鳥です。
次に、磯に縁が深いかといえば、それも今や違います。内陸の奥深くまで、イソヒヨドリの生息域は広がっており、特に、近年は町なかの住宅地に多く見かけるようになりました。非常に美しい鳴き声で、朗々と大きな声でさえずります。思わず鳴き声のする高みに目をやると、屋根の上に、上半身が青色で下半身がレンガ色の美しい鳥を見つけることができるでしょう。
こちらはイソヒヨドリのメスです。オスのような青い色は無く、全身灰褐色の地味な姿です。胸から腹にかけてのウロコ模様も特徴です。写真の個体は、子育て中のメスで、巣の中のヒナに餌を持ってきたところです。これまでの観察で、イソヒヨドリの好物のひとつはムカデのようで、よくムカデをくわえている場面にでくわします。人には嫌われ者のムカデを食べてくれるということでは、町のイソヒヨドリも益鳥といえるのかもしれません。
かつては磯の岩場をすみかにしていたイソヒヨドリにとって、人の生活圏は新たなすみかとしてもってこいだったようです。屋根や壁のちょっとした隙間が、彼らの格好の営巣場所。人が暮らしていることで、天敵の目から逃れることもできます。
イソヒヨドリはオスだけでなくメスもさえずります。また繁殖期に限らず、天気のよい日などは高みでさえずることがあります。「ヒッヒ・ヒッヒ」「カカカッ」と、まるでジョウビタキのような地鳴きをします。この季節にジョウビタキ?と思って探すと、イソヒヨドリだったりすることもよくあります。
人と近い距離で暮らすようになったイソヒヨドリ。多くの野鳥が繁殖期を終えてさえずることが無くなってからも、美しい歌声を聞かせてくれる身近な野鳥。とりわけ、美しい姿をしたオスの姿を見つけると、何かラッキーな気持ちがしてきます。