氷ノ山周辺でソウシチョウの生息が話題となり始めたのが2005年。ちょうどコウノトリの試験放鳥が始まった年です。氷ノ山登山でたびたび笹薮の中から聞きなれない美しい囀りが聞こえ、2012年6月にようやくその姿を写真に収めることができました。
氷ノ山中腹から上のチシマザサの薮の中がソウシチョウの繁殖場所で、同じ環境で繁殖する在来種のウグイスとの競合が懸念され、特定外来種の「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。江戸時代に中国から持ち込まれた飼い鳥が野生化したものです。
美しい囀りにくわえ、黄色と赤の美しい姿をしています。飼い鳥として重宝された理由も頷けますが、1980年代より中国からの輸入が増え、「カゴぬけ」個体の野生化が生息域を広げにつれ、問題視されだしました。
但馬では氷ノ山周辺で最初に確認されたソウシチョウ。私の継続的な観察では、2013年には蘇武岳直下で、2015年には大岡山で、分布域を広げる中でたびたび姿を確認するようになりました。
2016年1月には、豊岡盆地の雪の里山林縁でソウシチョウの群れを確認。但馬では、この鳥が繁殖期は山で暮らし、冬は里におりて暮らす漂鳥としての行動様式を持つことが分かりました。
郊外に建つ我が家の裏は山林につながっており、この秋はソウシチョウがすぐ近くでよく囀るようになりました。早朝に特に賑やかに鳴き、我が家の目覚まし時計代わりといったところ。
その日も、朝からソウシチョウが断続的に鳴き交わしていました。ソウシチョウは群れで行動します。「ドン」という割と大きな音がして玄関を出てみると、なんと、2羽のソウシチョウが横たわっています。さきほどの音は、ソウシチョウが壁か窓ガラスに衝突した音だったのです。争っていたのか、タカに追われたのか、何か非日常なことが起きてパニックになり、衝突したものと推察します。
氷ノ山でソウシチョウの写真を初めて撮影してから10年。ソウシチョウは但馬山地内で繁殖域を拡大し、晩秋には山を下りて人里周辺で越冬生活をするようになったことを、今回の我が家訪問で再認識しました。