県立コウノトリの郷公園内にある豊岡市立コウノトリ文化館に、新しい剥製標本が仲間入りしました。今回はその鳥の話題です。
ミズナギドリ目ミズナギドリ科のアナドリという、但馬地方では初めて観察された迷鳥です。兵庫県では1985年に神戸港、2005年に明石海峡大橋で、いずれも台風後に落鳥の死亡個体で確認されています。今回の個体は、2018年9月10日午前に豊岡市内の路上で見つかったもので、やはり台風の暴風の後のことでした。
この鳥の仲間はかつて管鼻目と呼ばれるグループに属し、今の分類ではミズナギドリ目に分類されています。その特徴はやはり鼻にあります。多くの鳥がくばしの横に鼻孔が開いているのに対し。このグループは上くちばしの付根に筒状の突起があり、その先端に鼻孔が開口しています。海水から水分を補給するこのグループは、特殊な鼻の構造で塩分を外部に排出するそうです。
水鳥なのでちゃんと水かきがあります。魚類をはじめ、海の生物を採って暮らしています。太平洋上の広い海域に生息し、日本では小笠原諸島近海で観察できます。繁殖は島の岩場のすきまや土の斜面に穴を開けて巣を作り、その習性から「穴鳥」と名付けられたのでしょう。
今回路上で拾われたアナドリは、死後間もない綺麗な状態だったそうで、但馬野鳥の会のご厚意でコウノトリ文化館の収蔵物として提供されたものです。剥製は飛翔姿を再現してあり、水かきも綺麗に処理がしてあります。ブーメランのような細長い翼で、洋上をシャープに飛び回りながら暮らす姿が想像できるでしょう。
大型台風の去った後には、ときどきこのような珍しい鳥が飛ばされてきます。アナドリには悲運でしたが、普段見ることのできない貴重な鳥の標本となって、来館者の学習に一役買ってくれることでしょう。コウノトリ文化館2Fの収蔵室に展示してあります。ぜひ見に来て下さい。