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ヤイロチョウ

森の妖精に会う

長い間、この鳥との出会いを待ち続けてきました。深い谷の底から遠く聞こえてくる「ホーエン・ホーエン」という2拍子の特徴的な鳴き声を聞きながら、いつか目の前にヤイロチョウが現れることを期待して毎年同じ山道をめぐり続けました。

2年前、初めて林道脇でヤイロチョウの姿を一瞬だけ目撃したときは、幻でも見るような気持ちでした。昨年、距離はかなりあったものの、しばらくの間、枝に止まって鳴くヤイロチョウを観察し、写真にも収めることができました。

そして今年、6月終盤の森の中。昨年観察したのと同じ場所で、まさに目の前にヤイロチョウが出てきたのでした。ヤイロチョウの英名は”Fairy pitta”。pittaはこの種の総称、Fairyは妖精の意味で、まさに森の妖精の名にふさわしい、美しいその姿がそこにあったのです。

しかも、このときに出会ったヤイロチョウは巣材をくわえていました。昨年から、但馬の山地でヤイロチョウの繁殖状況を継続的に調査し始めたところで、くりかえし近い距離で鳴き声を聞く回数の多かったこのエリアに注目していました。まさにその場所で、巣材を運ぶヤイロチョウに出会ったのです。その後、何度も足を運んで営巣場所の確認、ヒナへの餌運び、ヒナの姿などの証拠をつかもうとしましたが、結局この一瞬の出会いだけで今シーズンのヤイロチョウ観察は終了となりそうです。

ヤイロチョウは暗い森の林床に巣を作るそうです。餌となるのはミミズや土中の昆虫。ここ数年でヤイロチョウの声を聞く機会が増え、さらに今回のような接近遭遇がかなったことで、本種が但馬の山で数を増やしてきていることが予測されます。ヤイロチョウが当地で数を増やしてきた背景には、ニホンジカの大増殖があると考えています。シカが林床の植物を壊滅的に食害し、土がむき出しになった森の地表は、ミミズを主食とするヤイロチョウには格好の生息環境になったのではないか。そのように考えてもよさそうです。

暗い森の中で生活するヤイロチョウ、飛ぶときの姿も鮮やかなコバルトブルーをきらめかせます。あえて天敵に見つかりやすい蛍光色をまとうのは、暗い森の生活者ならではの、仲間や繁殖相手に対する信号なのかもしれません。

但馬でのヤイロチョウの繁殖は、人里でたまたま観察された本種の行動状況や、人家で落鳥したヤイロチョウの腹に抱卵斑が認められたことから、かなり前から予測されていたことです。ヤイロチョウ繁殖の証拠のひとつを今回間近に目撃したことで、本種の繁殖状況について今後にわたる継続調査にはずみがつきました。まだまだ希少種であるヤイロチョウが、かつてはそうだったアカショウビンが近年数を増やしてきたように、やがては珍しい鳥ではなくなってくれることを望みたいです。それまでは、静かに彼らのことを見守ってやってほしいと思います。

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