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ムラサキホコリ

ムラサキホコリ目  ムラサキホコリ科 ムラサキホコリ属 Stemonitis fusca Roth 紫埃

ムラサキホコリ、単子嚢体型、束生し、有柄で高さ5~20㎜。子嚢は円筒形で基部と先端は丸くて暗褐色。細毛体の内網の連絡部は普通拡大する。表面網は角張り刺がある。胞子は直径7.5~9µmで細かい疣状網目型。網目は直径線上で9個程度まで。春~秋に腐木にふつう。
ムラサキホコリ目、ムラサキホコリ科、ムラサキホコリ属、ムラサキホコリ。
ムラサキホコリ目のタイプ属はムラサキホコリ属でそのタイプ種はムラサキホコリである。
つまりムラサキホコリはムラサキホコリ目を代表する種である。

以下は駄文である。
ムラサキホコリの仲間はあまり紫色には見えない。茶色。褐色~暗褐色。本種ムラサキホコリはかろうじて暗紫褐色で紫色を少し連想させる程度だと思う。
ムラサキホコリ目の学名Stemonitidales(ステモニティダレス)に対応する適当な日本語訳はないようである。もしかすると学名そのものに紫の意味が含まれているのではないかと思ったが、そうでもなさそうである。ムラサキホコリ目という一大勢力の和名が名付けられた由来は興味深い。

日本語の「紫」というのは、なかなか幅が広くて、明るいパープル、バイオレット、もあれば、もっと深い色を表す場合もあり、もともとは植物のムラサキからきており、「群れて咲く」が転じて「むらさき」いうのが語源のようだ。
ムラサキホコリ属は変形菌の中では大型のものが多く、1~2㎝に達するものも珍しくなく、キノコを探す感覚でも見つかるので、キノコ愛好家にとってもなじみの深い変形菌だと思う。群れるように、子実体を咲かせて、胞子を飛ばしているので、「群れて咲くホコリカビ」と呼ばれるようになった、と愚考するのだがどうであろうか。

変形菌に詳しいK先生の意見を聞いてみたら、ムラサキホコリは未熟体が成熟するとき紫黒色になることから名付けられ、この種が属のタイプ種であるので属の名前にもなったのではないか、とのご意見であった。確かにムラサキホコリはムラサキホコリ属の中では一番紫色を含んでいると思うし、未熟体の時にその傾向が強いと思う。私は直接見たことはないのであるが、ネット上ではごく若い時の画像で半透明の明るい紫色のものを見ることができる。有力な説だと思う。

1995年発行の平凡社「日本変形菌類図鑑」の巻末に、解説者の山本幸憲先生が「研究する仲間が徐々に増えてきているので、なんとか一般に通用する和名がほしい」と思われ、氏が1993年に提案した和名を基にこの図鑑が取りまとめられたことが書かれている。この図鑑が作られた当時は多くの変形菌には、まだ和名というものが付いていなかったのである。
さらに時代は遡るが、戦前において昭和天皇や南方熊楠が変形菌を熱心に研究されていたことは有名であるが、その時代は変形菌の和名はほとんどなく、あってもあまり使われなかった。研究者の間では学名で用が足りていたので、あまり和名の必要がなかったのである。

そんな時代においても唯一といってもよい例外が、ムラサキホコリカビ(ここで紹介しているムラサキホコリ)であり、高等学校の「生物」の教科書にしばしば登場し、カビでもないのに、カビと呼ばれ、生徒に記憶すべき生物名をひとつ増やしていた、とのことである。このようにムラサキホコリは、既に戦前において、変形菌を代表する種として、和名が高等学校の生徒に教え込まれていたことである。驚くべきことだと思う。この種がわが国で確認されている500種ほどの変形菌の中でも、別格であることがよく理解できるのではないかと思う。

さて、ようやくムラサキホコリという和名から離れて、この生物そのものの話に入りたい。雑な説明になるが、変形菌という生き物が構成されている「変形菌綱」という分類群は、胞子が詰まっている子嚢という部分に、軸柱がない「明胞子亜綱」と、軸柱がある「有軸亜綱」というグループに分けられている。その有軸亜綱の中でもムラサキホコリ目はモジホコリ目と勢力を二分している。
そのムラサキホコリ目を代表する種がムラサキホコリであるなら、やはりここでしっかりと紹介しなくてはいけないだろうと、ずっと感じていたところである。しかし、なかなかそれが難しい。つまりしっかりした同定ができなかったり、ほかにも紹介したいのがたくさんあったり、ほかに手ごろな種が見つかり、ついつい横着をしたりして、紹介が後回しになっていたのである。
分類の基準は「日本変形菌誌」(山本幸憲 日本変形菌誌製作委員会2021年)である。

ムラサキホコリの仲間はよく似たものが多くて、種同定が難しい。共通しているのは胞子が詰まっている部分、つまり子嚢がフランクフルトのよう形である。子嚢に軸柱があれば有軸亜綱である。フランクフルトみたいなやつであれば多くはムラサキホコリ目で、柄が中空ならムラサキホコリ科になる。
プレパラートを作るときに折れた柄からあぶくが出たら中空であると判断している。日本変形菌誌ではコムラサキホコリ属も柄が中空なのに、なぜか柄が中実しているスミホコリ科に分類されている。この点は私にはよくわからない。

生物顕微鏡で見て、表面網がほぼ完全で平面的であればムラサキホコリ属ということになる。これはいろいろと見比べてみないと分からないが、表面網が無いカミノケホコリ属や不完全なコムラサキホコリ属などいろいろと見てみると分かってくる。
ムラサキホコリ属だと分かれば、リター生か樹上生か。樹上生であれば、胞子は網目型か疣型か。今回の標本は樹上生で胞子が網目型。ここまでくると、日本変形菌誌検索表のBに絞られてくる。この時点で6種類の中のどれかということになる。

さらに胞子の大きさを生物顕微鏡でしっかりと見てみると7.5~9µmであるから、それに該当するのはムラサキホコリということになる。大きさ、色、その他図鑑の記載内容とも特に矛盾は見当たらない。ホソミムラサキホコリとやや紛らわしいが、胞子の大きさ、胞子の直径に対する網目の数、子嚢の色などからムラサキホコリと同定した。

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