ヒメカタホコリ。落ち葉に出る変形菌、いわゆる葉っぱ系の変形菌のもっとも代表的な種の一つと言ってよいだろう。春から秋にかけて、特に梅雨明けのころ、背の高さは2mm程度まででとても小さい。
白くて球形の子嚢が黒っぽい軸の上に乗っかって立っている。そんなのが落ち葉から群生していたらヒメカタホコリの可能性が高い。子嚢の表面は白色星形の小さな石灰結晶に覆われている。普通種で珍しくないのであまり大切に扱われないことが多いように思うが、よく見るとなかなか可愛らしくて美しい。
黒い柄に白いボンボンさんが乗っていたらヒメカタホコリなのかと言われると、そうはいかなくて、よく似た仲間がいろいろあって見分けは難しい。一番似ているのはゴマシオカタホコリというもので、外見だけではよく分らない。
まず、柄に少し違いがある。ゴマシオカタホコリは色が薄くて、ヒメカタホコリは黒い。ゴマシオカタホコリの柄は透過光で半透明、ヒメカタホコリの柄は上部のみ半透明。柄については、二つ並べて比べてみても初心者には、確かに、、違いますねえ、、微妙、、、、っていう感じ。
「日本変形菌誌 山本幸憲 日本変形菌誌製作委員会2021年」の検索表によれば、顕微鏡下で子嚢壁に褐色の斑紋があればヒメカタホコリとすぐに判明する。すなわち、ヒメカタホコリには顕微鏡下で子嚢壁に褐色の斑紋が確認できるが、ゴマシオカタホコリにはない。これは決定的な違いと考えられる。とは言っても私の技術では、あるいは、顕微鏡がぼろいからかもしれないし、使い方が分かっていないからかもしれない、子嚢壁は石灰結晶が覆われているから、斑紋があるかなんてわからない。他の方々から、この見分け方が有効であるという意見も、残念ながら今のところ聞いたことがない。実用している方がいらしたら、是非ご教授願いたい。
もっとも実効性が高い見分け方と思われるのが、軸柱の色ではないかと思われる。ヒメカタホコリの軸柱は褐色から暗褐色、ゴマシオカタホコリの軸柱はほぼ白色である。つまり子嚢を割ってみて、軸柱が褐色~暗褐色であるかどうかを確認すれば、ヒメカタホコリであることを確認することができるということである。
しかし、直径1㎜までの子嚢の外壁を破いて、細毛体や胞子を針先か何かでかき分けて軸柱を見つけ出すのである作業は困難を伴う。老熟した個体であれば、うまい具合に子嚢の崩壊が進んで軸柱が露出している場合があるのですぐに観察できる場合もある。なお、軸柱が褐色~暗褐色と言っても、地の色は白で、その上に褐色が乗っているような感じである。なので、慣れないと褐色なのか白なのか、胞子の色なのか何なのか、もうひとつよく分からないので注意が必要だと思う。
いろいろと駄文を重ねてきたが、変形菌の同定に熟練された方が読まれたら、未熟なものがいい加減なことを書いていると思われるような気もする。非常にわかりにくい説明となってしまったかもしれない。まだまだよくわからない状況でもあるが、今回このレポートを書く気になったのは、先日、複数のヒメカタホコリについて、専門家に同定していただく機会に恵まれ、ヒメカタホコリに間違いのない複数の標本を手にすることができたからである。自分なりの今の時点での解釈をこのような駄文にまとめてみたということである。
参考までに、ゴマシオカタホコリらしきものの写真を一枚あげておくので違いを確認してもらえれば幸いである。また、お気づきの点についてご指摘いただければ非常にありがたいのでよろしくお願いします。
ヒメカタホコリ、単子嚢型で群生し、有柄で高さ1.5㎜程度まで。子嚢は亜球形から半球形、直径0.3~0.5㎜程度、星形で白色の石灰結晶に覆われる。柄は細長くほぼ直立し、軸柱は亜球形で褐色~暗褐色。胞子の直径は細かい疣型で7~10µm。春から秋にリターなどにふつう。