オオユリワサビ アブラナ科
福岡県の希少野生生物の2001年版には
「1933年,大島村の沖ノ島で採集された標本に基づき,その2年後に新種として記載された植物で,1963年の調査で再確認されたが,1993年の調査では再確認はされていない。渓流沿いの湿潤な生育地が土で埋没したのが,絶滅の原因と推定される。沖ノ島が基準標本産地および世界で唯一の産地であった。」
と書かれています。環境庁時代のレッドデータブック(2000)にも絶滅と書かれています。
ただ一つの孤島にだけ生育し、絶滅してしまったと思われていたオオユリワサビでしたが2000年には日本海側に広く分布するらしいことが報告されました。やがて京都府でも見つかり、兵庫県(但馬)にもあるに違いないと思い、俄然やる気になりました。
ワサビ 2004年、当時は、至るところの谷に普通にあったが、今は崖地にしか残っていない
ワサビ属には、オオユリワサビの他にワサビとユリワサビがあり、かつての但馬にはどちらも結構ありましたが、シカによる食害が進んで、それらもなかなか見つからない状況になっていました。
葉柄の基部が肥厚して鱗茎状になる。ユリワサビは肥厚しない。
ユリワサビ。葉柄の基部が肥厚せず鱗茎状にならない。
私があちこち探している間に、兵庫県にオオユリワサビが生育していたことが分かりました。兵庫県立人と自然の博物館で植物標本をデジタル登録するための作業をされている中でユリワサビとされていた標本の中にオオユリワサビの標本が複数見つかりました。兵庫県で採られたものも含まれていました。どうやら多くの県で同じようなことが起こっていたようです。思い込みは怖いです。明らかに違います。
植物標本には、採集地を書いたラベルが貼られています。
まだ残っているかもしれないとラベルに書かれた産地に調査に行かれました。
残念ながらそこにはありませんでした。
出会える人は出会えるのです。標本の中からオオユリワサビを見つけられた方が、たまたま入られた谷にオオユリワサビが生えていたのです。もともと別の目的で入られた谷は私もよく入る谷です。見つけられた谷は、隣接していますが、わざわざ入るかなあというところです。寄り道、大切ですね。
精力的には動かれている方なので、最も可能性の高い方ですが、それでもすごいですね。出会っちゃうんですね。私も頑張ろうと思います。
袋がけして種子を採取する
わずかだが種子が採れた。植物園に送ったが、この年は発芽したものの枯れた。
さて、発見されたオオユリワサビですが、シカにかじられており、危機的でした。太平洋側からお世話に来ていただくわけにもいきませんから、場所を教えていただいて、私が引き継ぐことにしました。とりあえずいろいろお世話して、絶滅はしないようにはなっています。
今回は、オオユリワサビというよりも、すごい人の話になりました。