ダイダイホネホコリ
ホネホコリの仲間に対する私のイメージは、どちらかというと地味。比較的大きくて肉眼でも見えるが、白系の単色で葉っぱにへばりついている感じ。せいぜいマンジュウホネホコリがピンク色をしているものの、派手な色合いではない。
そんなイメージをホネホコリ類には持っているのだが、なぜかこのダイダイホネホコリというのだけは全然違っていて、鮮やかなだいだい色、立派な柄があって、大胆な形をしている。ネットで見る限りではわりと各地で普通に観察されているようで、それほど珍しい種類ではないようなのだが、私はまだ見たことがなかった。
何とか見てみたい変形菌の一つであるが、見ることができていないものの一つで、なんとなくこいつは探しても出会えないような気がして、というか、こんなのには会えるはずもないだろうという風に勝手に思っていたような種だった。
そんなダイダイホネホコリに思いがけず出会うことができた。10月に入った香美町村岡区兎和野高原、標高650mほどの場所。
美しい秋の変形菌で、これもまだちゃんとしたものを見たことがないルリホコリを探していた。松の倒木の下側を覗いてみると、小さな橙色に気が付いた。最初は何かよく分らなくて、拡大してみるとその形は食虫植物のラフレシアを連想させた。よく見ると写真でしか知らないダイダイホネホコリのようだ。
裂開の始まる前の子嚢は鈍橙色の亜球体。
やがて子嚢壁が花弁のように開き、逞しい胞子の塊が現れ、粒粒感が美しい。
倒木の下側にぶら下がるように出ているものは、大量の胞子を付けた細毛体が、ぶら下がるように垂れ下がっている。
こうした形の写真は見たことがない。珍しい構図かもしれない。
胞子を飛ばし切ったものは、太い軸柱が印象的だ。ともあれ、駄文や写真ではなかなか伝えられないような光景だった。
子嚢は鈍橙色で半~扁~亜球形、直径0.5~0.6㎜程度、子嚢壁は亜軟骨質で裂開は上部から不規則に起こり、4~5個の反転する裂片となる。暗褐色の胞子をぎっしりと抱えた細毛体の塊がやがてほぐれていく。柄は赤褐色、細長く子嚢体の高さの1/2以上、軸柱はやや棍棒型で子嚢の高さの半ばに達し、胞子を飛ばした後によく目立つ。
日本変形菌誌(山本幸憲、2021年、日本変形菌誌作成委員会)では「おもに秋に腐木上に稀」とのこと。