ミズトラノオ シソ科
『改訂 近畿地方の保護上重要な植物 レッドデータブック近畿2001』という本があります。その表紙は、ミズトラノオです。見事な群落で、これに憧れていました。
豊岡市日高町のため池の奥にミズトラノオの但馬で唯一の自生地があります。いろいろと紆余曲折があって、心配しましたが、今は非常に大きな群落になっています。とりあえず絶滅を免れてほっとはしているのですが、困ったことに最近は一向に花が咲きません。
ここ10年近くは花が咲かないのですが、発見当初はチラホラと咲いていました。
ここのミズトラノオを発見したのはため池の奥の水田が休耕された翌年です。休耕された直後の水田は、それはそれは見惚れるようなよい湿地になります。見ていて気持ちがいい上に、珍しい植物が出てきたりもします。そして本当にそこに但馬新産といってよいミズトラノオがあったわけです。
翌年、個体数は多くないものの離れ離れに数株ずつくらいの開花が見られました。花は美しいものの見栄えのするものではありませんでした。数年後、地下茎で増えたのでしょう。一面がミズトラノオという場所もできてきました。イノシシが大暴れをしていましたから千切れた植物体からも増えたのかもしれません。ところが開花は全く見られなくなりました。
自生地が1か所というのは不安です。2014年、生息域外保全としてコウノトリ文化館で育てることにしました。順調に増えましたが、ここでも咲いてくれません。ところが、年が経つと少しずつですが決まった場所で開花が始まりました。2023年現在、3か所で咲く予定です。咲く数も年々増えてきています。といってもまだ最多で10数個体ほどなのですが。
私は考えました。花が咲かなくなったのは、休耕後に肥料分が切れたからに違いない。咲き始めたのは、肥料分が溜まる場所に違いないと。実験すれば分かるのでしょうが、どなたか、お願いします。
2022年、思ってもみないことが起きました。ため池の奥にあった自生個体群からやってきたのでしょう。ため池の前のビオトープに大群落ができていて、お花畑ができました。あの表紙の写真に負けない規模と密度の開花です。このビオトープは休耕から間がないのでまだ肥料分も残っているはずです。きっと、2023年もたくさん咲くはずです。つぼみを確認しているので咲くのは確実です。
私の説では、あと数年は咲くはずです。太平洋側では、8月末に咲き始める場所もありますが、豊岡では、だいたいい10月初旬から中旬です。沢山の方に見に来ていただけると嬉しいなと思っています。
環境省カテゴリ:絶滅危惧Ⅱ類(VU)
兵庫県:Bランク
本州、四国、九州。西脇市、三木市、小野市、加西市、福崎町、赤穂市、豊岡市、丹波市。
低湿地に生える多年草。茎は横にはう地下茎から立ち上がって、高さ30-50cmになり、やわらかく、3-4個ずつ葉を輪生する。葉は線形から広線形で、長さ3-7cmになり、幅2-5mm、