クモノスホコリ
中学のころからキノコに興味を持ち、長年それなりにキノコ観察を続けてきたが、その延長で数年前から生物的には全く別物なのだが変形菌(粘菌)に興味を持つようになった。当初は、山中をキノコ目で歩きながらでも発見できる、比較的大型のツノホコリ類や、ムラサキホコリ類を中心に観察していたが、昨年、日本変形菌研究会の研修会に参加して以来、アミホコリやモジホコリなど、いわゆる粘菌目、つまり、歩いて探しているようでは見つけられない、怪しそうな場所にしゃがみこんだりしないと見つけられない、子実体がほんの数ミリの小さなものに手を出すようになり、それを実態顕微鏡や光学顕微鏡で見る美しさに嵌ってしまったのである。(光学顕微鏡の使い方はまだ未熟である。)
今回紹介するクモノスホコリなどは、とても特徴的な形態で、高さは5ミリ程度までで、柄の先にほぼ球体の子嚢を持ち、それが首をかしげたようで可愛らしい。その子嚢は40~50本ほどの肋と呼ばれるスポークのようなものに包まれ、若いうちは中にぎっしりと胞子を持っているが、やがて老熟し胞子を飛ばし切ると、柄と肋だけが残される。
変形菌の生態を語ると長くなるので別に譲るが、彼らは動物的アメーバ状の生活をしており、繁殖のときに子実体を作り、一夜にして胞子を飛ばすための子嚢体に変身する。今回(昨年秋)は、変身初期の真っ黒なクモノスホコリを採取することができた。
また、その翌日の若いクモノスホコリを撮影することもできた。非常に美しい。
なお、今回分かったのだが、但馬ではクモノスホコリはごく普通種であり、まじめに探すと、結構見つけることができる。
小さな粘菌の世界、倒木の朽木などでアミホコリ系らしき粘菌の単子嚢体の群生をなどを見つけると、「おおお!」と、声が出てしまうのだが、大喜びでルーペをのぞき込むと、ほとんどがクモノスホコリだったりする。
最初の1年目で、クモノスホコリの標本だけは様々なステージのものが集められたと思う。
*学名を修正しました。2024年4月20日