この冬は雪がほとんど降らず、例年だと平地で観察される冬の野鳥の姿が少ないまま、初春を迎えようとしています。そんな状況の中、シベリアから越冬のために飛来したコハクチョウとマガンは、野鳥ファンだけでなく、多くの人々の目にとまり、冬の豊岡盆地の風物詩を保ってくれました。今年のコハクチョウとマガンの飛来状況をまとめておきます。
小型のカモの多くは夜行性で、昼間は川の静水域や湿地の水辺で休んでいます。大型のカモのコハクチョウやマガンは、日中の田んぼで採餌活動をし、夜は水辺で眠ります。写真は、餌場の冬季堪水田で草を食べているコハクチョウ。昨年末に2家族9羽のコハクチョウが飛来し、そのまま越冬生活に入りました。成鳥2羽と幼鳥5羽の構成です。
夕暮れになると餌場から一斉に飛び立ちます。飛び立ちの前は、仲間同士で「コーコー」と鳴き合い、首を伸縮させて飛び立つタイミングを図ります。やがて1羽の飛び立つ動きに連鎖し、一斉に水面を駆けて滑走し上空に舞い上がります。大きな体に揚力を与えるには、30mくらいは滑走する必要があります。
日中餌を採って過ごした堪水田から、直線で3キロ少し北にある堪水田が彼らのねぐら場所になっています。ほとんど毎日、日暮れになると同じ堪水田に群れで戻ってきて、朝までここで眠ります。
9羽のコハクチョウに混じって、2羽のマガンが越冬しています。マガンの行動もコハクチョウと同じく、昼行性のカモです。11月末に豊岡盆地に飛来した成鳥2羽がそのまま越冬に入った様子です。コハクチョウに比べて警戒心が強く、近づくとすぐに飛んでしまいます。
マガンは一時3羽になりました。コハクチョウ9羽とマガン3羽が一緒に行動する様子がしばらく観察されましたが、1羽が去って最終的に元の2羽が越冬を続けています。
マガン、コハクチョウが越冬生活を終え、北帰行を始めるのは2月の終わり。12月から3カ月に渡って豊岡盆地で過ごした彼らは、繁殖地である北極海沿岸沿いのツンドラ地帯に帰って行きます。