クネリカタホコリ、豊岡市街地近くの里山にあるお寺。法事のお墓参りの際、参道脇の落ち葉だまりをふと見ると、変形菌の子実体らしきものが見えた。すぐにその一部を採集した。まだ未成熟の、つやつやとした美しい子実体も含まれていた。なんとなく見たことがあるような、ないような……。
数日後、数キロ離れた別の場所でも、同じような環境の落ち葉から、よく似た子実体を発見した。梅雨時には、豊岡の各地で発生しているのかもしれない。
当初はハイイロフクロホコリやガマグチフクロホコリあたりかと思ったが、よく分からず、詳しく調べないまま、しばらくそのままにしていた。ある日、あらためて写真や図鑑を見返していたところ、クネリカタホコリではないかと思い至った。
子実体の形態には、カタホコリ属の特徴が見られる。表面に星形の石灰結晶をまとっていることは、カタホコリ属を見分けるうえで重要な特徴の一つである。しかし、結晶はとても小さく、実体顕微鏡で観察しても、星形なのかどうかよく分からないほどだった。ヒメカタホコリなどと比べても、ずっと細かく見える。
子嚢壁が割れた部分から内部をのぞいても、フクロホコリ類に見られるような石灰節は確認できなかった。ただし、小さな星形の石灰結晶が飛び散って石灰節のように見えることもあり、判断はなかなか難しい。白い変形膜の付き方も、フクロホコリ類とは異なるように思われた。カタホコリ属でこの形ならクネリカタホコリだろう。
写真:所どころに胞子より大きな小嚢が見える。
そこで、生物顕微鏡で検鏡してみると、特徴的な胞子が観察できた。透過光では暗褐色で、表面には不規則に散在する刺が見られる。刺の配列は不規則で、亜網目状にも見える。網目があるような、ないような、何とも中途半端な模様である。胞子の直径は約11μm。山本幸憲著『日本変形菌誌』(2021年)の記載ともよく一致する。さらに、胞子よりも大きな袋状の小嚢も確認できた。クネリカタホコリと同定した。初めての出会いである。
学名についても分析してみよう
1.属名 Didymium(カタホコリ属)
Didymium は、ギリシャ語の didymos(双子、対になったもの)に由来する。
2.種小名 flexuosum(フレクスオスム)
ラテン語の flexuosus は「曲がりくねった」「屈曲した」という意味で、flexuosum はその中性形である。ラテン語の形容詞には文法上の性があり、属名 Didymium に合わせた形になっている。
この種小名は、細長く屈曲し、枝分かれして網目状になる子実体の形を表していると考えられる。和名の「クネリ」と種小名 flexuosum は、意味のうえでもよく対応している。
3.命名者 Yamash.
Yamash. は、山城守也氏を示す著者略記である。山城氏は1936年に発表した論文で本種を新種として記載した。学名の末尾に著者名が括弧なしで付いているのは、現在の Didymium 属の種として記載され、その後、別の属から移されたことを示す著者表記になっていないためである。
4.別名との関係
興味深いことに、本種には、1938年に G.W. Martin と T.E. Brooks が記載した Didymium parietale という学名もある。2013年に発表されたメキシコ産標本の報告では、これが D. flexuosum の異名として扱われている。つまり、別の研究者が別の種として名前を付けたものが、後の研究によって同じ種と判断されたという経緯がある。
クネリカタホコリの記載者である山城氏は、ヤマシロホコリ Badhamiopsis ainoae (Yamash.) T.E. Brooks & H.W. Keller の原記載者でもある。日本変形菌研究会の人物紹介によると、山城氏は1936年の論文で、ヤマシロホコリ、クネリカタホコリ、アナアキカタホコリの3新種を記載している。私はヤマシロホコリを採集したことはあるが、アナアキカタホコリはまだ採集したことがない。
クネリカタホコリ、子実体は屈曲子嚢体型で、群生し、無柄。子嚢は灰色から白色で、ほぼ円筒形を呈し、側面は崖状に見える。幅は0.2~0.4mmで、しばしば網目状につながり、長さは3cm程度に達する。子嚢壁は膜質でもろく、半透明で、表面には星形の石灰結晶が見られる。子嚢内部には袋状の小嚢があり、胞子に似ているが、胞子より淡色で大きく、不規則な形をしている。軸柱は子嚢の中央部を縦に長く走り、壁状または衝立状で、子嚢の底部に付着する場合と、遊離する場合がある。変形膜は無色、または石灰質で白色。細網体は糸状で多数あり、基部では帯褐色で直径約2μm、上部ではより細く透明になる。胞子は不規則な刺状、または亜網目状の模様をもち、直径は11~13μm。主に夏、常緑広葉樹のリターにやや普通。
























