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モモイロウツボホコリ

ケホコリ目 ケホコリ科 ウツボホコリ属 Arcyria incarnata (Pers.ex J.F. Gmel.)Pers.  桃色靭埃

今回はとても美しい桃色のウツボホコリについて報告する。

昨年、2024年9月1日のコウノトリ文化館キノコ粘菌観察会で、小学4年生の小林君が雑木の枯れ枝に発生しているウツボホコリの一種を見つけた。

https://www.facebook.com/kounotoribunkakan/posts/pfbid0QYrr8BSN1gkm36iQGXaxMR2oqFLVqAYZKqXjEHE8H4rRA3wwN7tf3fMRWWkk8Qcel

山中で参加者みんなで変形菌を探しているときに、ボランティアスタッフとして参加している日本変形菌研究会員である西垣由佳子氏が、「とても美しいウツボホコリらしきものを小林君が見つけた!」と興奮気味に見せてくれる。そのウツボホコリらしきものを見せてもらった私はというと、あまりよく見ずにウツボホコリの普通種の何かだろうと、その時はなんとも思わなかったのであるが、同じくボランティアスタッフとして参加されていた同研究会員の枡岡望氏が、「これはモモイロウツボホコリではないか!」と指摘されたのである。もう一度よく見てみると確かに桃色で美しい。

コウノトリ文化館に持ち帰って改めて見てみると、ますます美しく見えてくるし、管内スタッフの女性陣が声をそろえて「美しい!」と絶賛する。しっかり調べてみると正しくモモイロウツボホコリであると確信するに至った。但馬初確認、小林要君の快挙である。

モモイロウツボホコリ。子実体は単子嚢体型で、密生し、有柄で高さ0.5~2.5㎜程度。伸長して5㎜程度まで。子嚢は円筒形でふつう桃色で退色して淡褐色。杯状体は浅くてふつうひだがある。柄は短くて細くふつう桃色。細毛体は管状で分岐かつ連絡して網を形成、網目はふつう非常に大きく、しばしば小さい輪状の網目があり、杯状体から容易に離れる。細毛体糸は直径2.5~5µm、半環状、環状または刺状紋が螺旋状に配列する。胞子は直径6~8µm、細かい疣型でより大きい疣の集合部が数個ある。春から秋に腐木上にややふつうとのこと。

写真:細毛体は杯状体から容易に脱落するとのことであるが、ピンセットで細毛体を引っ張ると、比較的容易に外れた。

「日本変形菌誌」(山本幸憲 日本変形菌誌製作委員会2021年)の分類基準、検索表に基づいて同定作業を進めてみる。子嚢壁は上部まで残存しているものではなく「基部のみ残存性」であり、細毛体は杯状体から容易に脱落する。よってウツボホコリ属検索表のBである。

子嚢は若いとき桃色を帯びており、顕微鏡で胞子を見れば、胞子の直径が9µm程度なので、検索表Bをたどっていくと、モモイロウツボホコリにたどり着く。

ウツボホコリの仲間は、顕微鏡により細毛体の形状などを観察することにより、漸く種同定の決め手を得ることができる場合が多いが、モモイロウツボホコリの場合は、胞子の直径までわかれば細毛体の細かいところまで調べる必要もないようである。

日本変形菌誌には「細毛体糸は直径2.5~5µm、半環状・環状または刺状紋が螺旋状に配列する。」と記載されているが、この点についても、検鏡の結果、矛盾はないようである。以上よりモモイロウツボホコリと同定した。

検鏡結果を待たずとも、何と言ってもこの美しい桃色を見れば、最も説得力があるというものだろう。

写真:採取後約10が月を経過した時点の写真であるが、他の標本についてはそれ以上に時間が経過しており褐色化が進んでいるとはいえ、桃色の美しさが際立っている。

赤色系統のウツボホコリ属には紛らわしいものがたくさんあって、種の判別はむつかしいのであるが、このモモイロウツボホコリについては、新鮮な状態の美しい桃色を見ることができればという条件付きであるが、間違いようがない納得感をもって子嚢の色から判別ができるのではないだろうか。新鮮なウツボホコリの鮮やかな赤とは全く違うピンク色なのである。
一年を経過した標本は、やや鮮やかさを失いつつあるので、野外においては老熟するにつれて図鑑に記載されている通りに褐色化していき、ピンク色は褪せて、他の赤色系統のウツボホコリ属との見分けが難しくなっていくのかもしれない。

モモイロウツボホコリを採取した日から約一年後の昨日、2025年9月7日に開催したコウノトリ文化館のキノコ粘菌観察会では、残念ながらモモイロウツボホコリに再会することはできなかった。思い返せば、昨年は腐熟度の非常に低い枯れ枝から発生していたモモイロウツボホコリ、私の知っているウツボホコリ属の仲間たちは、腐熟の進んだ太い倒木から発生しているイメージなのであるが、こいつは全く違うところから発生していた。しかもごく少数。日本変形菌誌には「春から秋に腐木上にややふつう」と記載されているのだが、また出会いたいものだ。

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