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イワウメヅル なんとか生き残っていました

イワウメヅル ニシキギ科

私がイワウメヅルを初めて知ったのは、1990年に始まった河川水辺の国勢調査結果を読んだときです。以後、気にしながらも現物を確認したのはようやく2000年くらいになってからです。希少な植物だと言われていましたが河畔林内にある大きな木に普通に巻き付いていました。以後の調査でも変わりなく出続けており健在なんだなと思っていました。

2024年、円山川では治水のための遊水池の工事が進みつつあります。工事による自然環境への影響を検討する会議の中で、次の工事の範囲内にイワウメヅルがあったという以前の調査結果を思い出しました。保全が可能かを探る調査をお願いしました。担当の方々と丁寧に見て回りましたが全くありません。調査地点は、もともと分布の周辺だったのでそんなものかと思いました。

稚株。成長の過程で多くは枯れる。

折角なので、かつてたくさんあった上流の河畔林も見に行くことにしました。ありがたいことに過去の調査結果がピンポイントで残っています。下流から上流に向かって探索しましたが、探せど探せど全く見つかりません。中間地点で大株がようやく見つかりました。思わず「あった!」と声が出ました。下にはその株からの種子由来と思われる稚株が多数ありました。次世代も育っていると大変嬉しく思いました。しかし喜びはここまででした。上流端まで探しましたが全くありませんでした。激減です。

河畔林内のシカ道

この日は20頭近いシカが現れていた

クリにできたクマ棚

これはまずいと思ってもう下流にあるもう1カ所の河畔林に行きました。林内に入るとすぐに嫌な予感がしました。上流の河畔林に比べると明らかに林床が荒れているのです。しかしイワウメヅルはつる性の樹木です。背の低い植物ではありません。大丈夫に違いないと信じて調べました。イワウメヅルが這い登れそうな木は全てチェックしました。キヅタ等は登っているもののイワウメヅルは1株もありませんでした。かつては普通にあったイワウメヅルが消えていました。絶滅した可能性があります。

河畔林はシカのねぐらになっていたのです。2024年には、ツキノワグマも利用しているようでした。

オニグルミ林

河畔林の周辺を調べてみました。堤外民地と呼ばれる場所に耕作放棄地が広くあります。放置されて年数が経っており、いつの間にかオニグルミ等が大きく育っているところもあります。

ありました。イワウメヅルは比較的広い範囲に点々と生育していました。半数以上で種子をつけていました。稚株がかたまって生えている場所もありました。とりあえず安泰だと思います。種子は、兵庫県立人と自然の博物館に送りました。

 

イワウメヅルは、兵庫県のレッドデータブックではBランクになっています。県内分布は、福崎町、たつの市、豊岡市、養父市と書かれています。何かがあって減っているということではなくもともと希少な種のようです。近畿地方全体で見ても希少な種のようで、京都府のレッドデータブック「絶滅寸前種」となっており、「府内に記録はあるが、近年目撃した人はいない。すでに絶滅している可能性もある。」とも書かれています。

 

鋸歯先の芒

イワウメヅルは、ツルウメモドキ属の植物で、但馬には、他にツルウメモドキ、オオツルウメモドキが生育します。多くはツルウメモドキです。3種の見分け方を書いておきます。

ツルウメモドキ
1 枝に棘がある。(葉の付け根にある托葉が変化したものです。)
2 鋸歯の先が芒状になる。

枝の棘は落ちていることがありますので、全体をよく見ましょう。どこかに残っていたらイワウメヅル確定です。鋸歯は芒状になっていないこともあります。

ツルウメモドキ
葉裏に毛がありません。

オオツルウメモドキは葉裏の脈沿いに縮れた剛毛が密生します。
イワウメヅルは葉裏の脈上に硬い突起毛があります。

オオツルウメモドキ
枝をはさみで切ると中にぽっかりと穴が空いています。

よく見ると棘がある。鋸歯先の芒もあるのでイワウメヅルだろう

恥ずかしい話なのですが、私は豊岡の外れの方の山にあるものはツルウメモドキだと思い込んでいました。初冬に調べてみるとイワウメヅルが結構見つかりました。近づいて手に取ることの大切さを痛感しました。

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