アカショウビンは主にブナ林で暮らす奥山の鳥です。5月半ばごろに南から渡ってきて、但馬の奥山で繁殖します。かつては幻の鳥とも言えるほど、出会うのが難しい鳥の一つでしたが、近年は数を増やして林道上からの観察も容易になってきました。
標高10数メートルの平地の谷あいの集落内でアカショウビンが観察されるようになったのは、ここ数年のことです。こんな平地でアカショウビンが見られるようになったんだと、近い将来には、きっとこの集落内で繁殖するかもしれないと期待しつつ、毎シーズン観察を続けてきました。
そしてその期待は、今シーズン、遂に現実のものになりました。民家の軒下に残置されていたキイロスズメバチの古巣に、アカショウビンが営巣を始めたのでした。オスとメスが交代でスズメバチの巣に飛び込み、ガリガリと音をたてながら巣内のリフォームを始めたのを確認したのです。
写真はスズメバチの巣に入ろうとしているところ。中のリフォームに加え、もともとハチがあけていた出入口を自分たちが出入りしたり、給餌しやすいように縦長の形に作り変えました。
抱卵に入ったのを確認した後は、繁殖の障害にならないよう、観察を中断してヒナの誕生を待ちました。抱卵開始日から孵化までのおおよその日数はすでにわかっていたので、その日がやってきた頃に観察を再開しました。複数の観察メンバーで観察を続けたのですが、ヒナに給餌する気配もなく、巣内にヒナの気配もまったく感じません。どうやら、抱卵途中でヘビが侵入して卵を食べられてしまったのだろうと、今シーズンの繁殖失敗をレポートにして自分のBlogで公開したその日の夜のことでした。
巣のある民家のオーナーの方から連絡があり、ヒナが地面に落ちて弱っていたので保護したと、思いも寄らない連絡を受けました。電話で状況を確認し、アカショウビンの巣立ちビナを地上で見つけ、捕まえて鳥かごに保護したとのことでした。オーナーの方には、弱っているのではなく、自分の力で初めて巣から外に飛び立ったばかりの巣立ちビナですとお伝えし、安全な場所で鳥かごの出入口を開けたまま、一晩様子を見てもらうことにしました。
写真は、その翌日に保護されていた鳥かごから自ら出て、隣家の庭で見つけたアカショウビンの巣立ちビナです。遠くに飛んでしまう飛翔力はまだありませんが、隣家の庭を少し飛んでは止まり、親鳥が時々給餌する様子も観察しました。
オーナーの方の話をお聞きすると、この巣立ちビナの1週間ほど前に最初のヒナが巣立っていたことがわかり、先に巣立ったその幼鳥も同じ庭で見つけることができました。
さらに、巣の中にはもう1羽ヒナが残っていて、親鳥が定期的に給餌を行う様子を確認しました。写真は、巣の出入口の前にある電線に止まり、餌のセミをくわえて巣内のヒナに巣立ちを促す親鳥の姿です。餌を見せびらかし、ヒナに飢餓感を与えて、飛び出す気持ちを高めるのが目的です。このヒナも翌日には巣からいなくなりました。平地の民家の軒下のキイロスズメバチの古巣を利用したアカショウビンの繁殖は、3羽のヒナを巣立たせて終了しました。
里と奥山を隔てるバッファゾーンとして機能していた里山の消失により、里の林縁が奥山と連続的につながった自然環境になりました。シカの里への傍若無人な出没、ツキノワグマの里での人との接触機会の激増、そんなことも里山消失のもらたした自然界の変化でしょう。アカショウビンの今回の事例のように、奥山の鳥が里におりてきて繁殖を始めることも今後にわたり増えて行くのではないか。そんなことを思いながら人家の庭をウロチョロするアカショウビンの幼鳥を観察していました。
























