ヤツメウナギ類はウナギによく似ていますが、ウナギの仲間ではありません。それどころか魚類ではないとする説もあります。私たちにとって馴染み深い魚類よりも原始的な脊椎動物です。無顎口(むがっこう)類と呼ばれる「顎のない」グループです。
日本のヤツメウナギ類は5種類いますが、但馬では今までに2種類が確認されています。カワヤツメとスナヤツメの2種類です。スナヤツメはさらに南方種と北方種に別けられまして、但馬に棲んでいるのはスナヤツメ南方種とされています。環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類、兵庫県レッドリストではBランクに指定されている希少種です。
春はスナヤツメが産卵する季節です。
3年間幼体で過ごし、4年目の秋から冬にかけて成体となり、春に繁殖して一生を終えます。砂底の小川に棲んでおり、湧水があるところを好みます。全長は大きいもので20センチほどです。一生を川で過ごします。
成体の口は吸盤状で、顎がありません。ヤツメウナギ類には、この吸盤で他の魚類に吸血する種類がいますが、スナヤツメは成体になるとエサを食べません。幼生の頃だけエサを食べます。デトリタスという水底の有機物などを食べます。
眼の後ろに7対の孔があります。これは鰓孔です。この孔を「眼」と見立てて、実際の眼と併せて「八つ眼(8対)のウナギ」ということからヤツメウナギと呼ばれるようになったと言われています。頭頂部に鼻孔が1つあります。また、胸鰭と腹鰭はありません。
こうして注意深く見ると、私たちが普段目にする魚とは姿が大きく異なります。魚のようだが魚でもない、面白い生き物です。
こちらは幼生の標本写真です。ヤツメウナギ類の幼生をアンモシーテスと呼びます。眼は発達しておらず、ミミズのような姿です。7対の鰓孔は、はっきりと確認できます。
但馬にもスナヤツメが棲んでいる川がありますが、ごく限られています。近年激減しており、年間で数匹見つかる程度です。
写真・文 コウノトリ市民研究所 北垣 和也