名前の通り、ひょうたん型の毛羽立った子実体を作る変形菌。子実体の高さは2㎜程度まで。秋から冬に主に針葉樹の腐木上に普通。
ヒョウタンケホコリ。特に変形菌に興味のない方は、あと読まずに写真だけを見ていただいたら良いと思う。
ヒョウタンケホコリは類似種のトゲケホコリ、キケホコリとの関係が難しい。今回掲載する写真はすべて典型的なヒョウタンケホコリ(だと思う。)の写真である。トゲケホコリとキケホコリの写真については次回にすることとして、今回はこれらの関係が難しいということについて書いてみたい。
キケホコリ Trichia affinis
トゲケホコリ Trichia persimilis
ヒョウタンケホコリ Trichia favoginea
以下に書くことは私の解釈であり、正確なことは原本を当たってもらわないといけないし、詳しい方が読めばいい加減な内容であるとお叱りを受けるかもしれない。
平凡社1995年「日本変形菌類図鑑」のキケホコリのところに、類似種のトゲケホコリにはらせん紋にトゲがあり、胞子のヘリの幅が小さく、キケホコリとトゲケホコリとヒョウタンケホコリをまとめて広義のヒョウタンケホコリとすることもある、という意味のことが書かれている。また、ヒョウタンケホコリのところに、類似種のキケホコリとトゲケホコリとは、子嚢がより長く、弾糸の幅が広く、胞子のヘリの幅が広いことなどで区別できるが、時に中間型が見られるという意味のことが書かれている。つまり、まず「キケホコリ」があって、とげのある類似種に「トゲケホコリ」があって、さらにひょうたん型の「ヒョウタンケホコリ」という類似種もありその3種類まとめて広義の「ヒョウタンケホコリ」とすることもある、という感じだ。これが1995年。
東洋書林1998年「図説日本の変形菌」のヒョウタンケホコリのところでは、弾糸は平滑またはとげがあり、胞子は粗い網目型でヘリの幅は広いという意味の記述があり。次にトゲケホコリについては、=(キケホコリ)としてあり、弾糸にトゲがあり胞子は不完全な網目型のトゲケホコリの図とは別に、弾糸にトゲがなく胞子は荒い帯状網目型のトゲケホコリ(キケホコリ型)の図が掲載されている。そして、「ヒョウタンケホコリ、トゲケホコリ、キケホコリの3型は、ときに明らかに区別できることがあるが、しばしば中間型があり、完全に区別することは不可能だと思う。しかし、ヒョウタンケホコリと広義のトゲケホコリとは、生態的にも形態的にも異なり、変種として区別した方が良いと思う。」と記載されている。つまり「ヒョウタンケホコリ」があって、もうひとつ「トゲケホコリ」があって、それには「キケホコリ型」があって、3つの型は概ね区別できるのだが中間型もあるのでややこしい、でもヒョウタンケホコリはそれ以外のものとはかなり違うから変種とすべきだと思う、というとても悩ましい感じ。それが1998年。
日本変形菌誌製作委員会2021年「日本変形菌誌」では、ヒョウタンケホコリとトゲケホコリがそれぞれ詳しく説明され、トゲケホコリについては螺旋紋に刺のないキケホコリ型としての図が添えられている。さらに、ヒョウタンケホコリの説明の末尾には、「欧州ではヒョウタンケホコリ類を3種類に分類することが多いが、しばしば中間型が出現する。」と記載したうえで、「狭義のヒョウタンケホコリ類の検索表」が掲載されている。すなわち、ヒョウタンケホコリ、キケホコリ、トゲケホコリの検索表で、弾糸の直径が6~8μmで胞子の縁の高さが2μm程度と大きければヒョウタンケホコリ、それよりも小さくて、胞子は穴のある幅広い帯状網目型で縁の高さが0.5~1μであればキケホコリ、胞子の網目は多少とも壊れて不規則な浅い穴のあるいぼ型で縁の高さが0.5μm程度であればトゲケホコリということになる(と思う)。つまり、ヒョウタンケホコリとトゲケホコリがあって、トゲケホコリにはキケホコリ型がある。欧州ではヒョウタンケホコリを3種に分類することが多いとして狭義のヒョウタンケホコリ類の検索表を示している。これが2021年。
素人的には外観で、十分にひょろ長くてヒョウタン型だったらヒョウタンケホコリ、少しヒョウタンという感じよりも短かったり丸っこい感じだったらトゲケホコリで、さらに顕微鏡を見て弾糸にトゲがなかったらトゲケホコリのキケホコリ型ということで良いのではないかと思うのだが、それでは乱暴なのだろう。
私がこれらのトゲケホコリ~ヒョウタンケホコリ達に出会ったことはまだ二桁に満たない回数だが、その多くは丸っこい者たちであった。一度だけ典型的なヒョウタンケホコリに出会えていた。
丸っこかったり、少し長めだったりというものではなく、少しくびれたひょうたん型に出会えていたことがうれしい。