5日間の大地

執筆 コウノトリ市民研究所   掲載 2015年08月13日 20時40分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる

六方田んぼ百合地巣塔の南600mの電柱の上で、百合地ペアの息子である5歳のオスJ0025と6歳のメスJ0016が初めての営巣育雛を経験しました。生まれた2羽のヒナのうち1羽は、巣立ち前に死んでしまいましたが、残る1羽は7月25日の朝に巣立ってゆきました。

巣立ったヒナはJ0113の個体番号を持つオスです。毎日の通勤途中、巣の中のヒナの様子を見るのが日課となっていましたが、巣立ち後もしばらく様子を見ようと寄り道していました。この写真は7月28日の朝の様子です。


車を停めた畦道に出てきて、枯れ草をくわえて反対側へと歩いてゆきました。真っ白な羽根と幼い顔つきが、巣立ちビナの特徴を印象づけます。


翌7月29日の朝、畦道にペタンと座り込んでいるJ0113を見かけました。首を動かしてはいるものの、遠目にも衰弱しているように見えました。連日の猛暑のせいかなとも思いました。


近くの巣では、親鳥が揃って子供を気にしているようにも見えました。この日の夕方に、同じエリアでこの幼鳥が目撃されて以降、翌日から行方不明になってしまいました。その後も朝夕に田んぼを巡回してみますが、J0113の姿を見つけることができません。

8月5日の朝、同じエリアで、変わり果てたJ0113の体の一部が見つかったと報告がありました。すでに何者かに食べられており、付いていた足輪からJ0113の死亡が確認されたのです。衰弱していたJ0113を、キツネかなにかが襲ったのでしょうか。あるいは、死んでしまった後に食べられたのかもしれません。巣立ってから、わずか5日の命でした。

元々弱い個体だったのかも知れませんが、親鳥にとって初めての子育てで経験不足だったとの見方もあります。すぐ近くに別のペアの巣塔があって、縄張りをめぐる軋轢があったのもネガティブな要因でした。

初放鳥から2年後の2007年に初めて野外でコウノトリが巣立ってから、このJ0113はちょうど100羽目にあたる巣立ちビナでした。コウノトリの自然放鳥が始まって10年目の節目にあたる今年ですが、野外個体数が増えたことによる新たな問題がコウノトリ社会にも出てきているように思います。コウノトリ野生復帰も、次なるステージへと向かう時期にきています。

写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信

初雁は6羽のヒシクイ

執筆 コウノトリ市民研究所   掲載 2012年12月22日 19時00分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる

10月に入ると六方田んぼに初雁(はつかり)の便りが届きます。島根県宍道湖周辺がマガンの主要な越冬地ですが、その旅の途中に当地へ立ち寄ります。この秋の初雁はいつものマガンではなく、6羽のヒシクイでした。晩秋の11月17日、六方田んぼの新田小学校北の田んぼに下りているのを見つけました。


ヒシクイは全身茶色の地味な鳥ですが、兵庫県レッドデータブックではコウノトリと同じ「絶滅種」にランクされる希少種です。カモ目カモ科に属し、細かく分けると亜種ヒシクイと亜種オオヒシクイの2種類がいます。今回の6羽は亜種オオヒシクイ。コハクチョウに比べると小さいですが、全長1m、翼開長1.7mの大型の鳥です。


警戒心がとても強く、車でゆっくり接近しても50m以内に寄ることが難しいほどです。このときも、警戒領域内に入った途端、一斉に飛び立ってしまいました。太いラッパのような声を上げ、翼をキュキュキュと鳴らしながらゆっくりと上昇し、高度を一定保つときれいな編隊飛行となって飛び去ってゆきました。


マガンやヒシクイの当地での滞在期間は、2〜3日間と短いのが通常です。休憩と餌の補給を終えると、再び飛び立って越冬地を目指します。今回の6羽のヒシクイは、1週間以上にわたって滞在を続けました。初認から1週間経った再会場所は、円山川下流のひのそ島の川岸。6羽がのんびり水に浮かんでいるところに、上流側からカワウ軍団が潜水を繰返しながら近寄ってきて飛ばしてしまいました。それが最後の目撃となりました。

豊岡盆地では、まだ数が少ないですが、コハクチョウの越冬が定着してきました。コハクチョウに加えて、やがてマガンやヒシクイが越冬するようになれば、冬の寂しい田んぼの風景が一際賑やかになることでしょう。広がる冬季湛水田を眺めながら、そんなことを夢見ています。

写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信

トラックも平気コウノトリ

執筆 稲葉一明   掲載 2009年11月23日 17時30分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる
コウノトリの郷公園が開園して10年。試験放鳥が開始され4年。46年?ぶりの野生化での巣立ちから2年3ヶ月。10月31日に豊岡市但東町唐川で2羽が放鳥され、37羽が自由に飛んでいる。参考までに飼育下では99羽が郷公園と増殖センターにいる。



コウノトリのいる風景もすっかり馴染んできた感がある。最近、蓼川大橋のたもとの円山川の浅瀬で良く見かける。車から良く見えるのだ。10羽ほどいただろうか。




朝もやの中、撮影した。一部飛び立たせてしまった。





横を沢山の車が行き交っている。





R312の横の電柱に停まった。






円山川が大好き、電柱も好き、トラックも平気だよ。人間は近づきすぎたら一応逃げます。






工事も平気、コウノトリ

執筆 稲葉一明   掲載 2008年02月23日 20時42分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる
私は、J0363 メス。2003年4月26日生まれ J044×J102(Rペア)。2006年9月23日に大磯の河川敷きで放鳥されました。
出石の小坂田んぼを中心に活動している。たくさん放鳥されたコウノトリの中でも一番自立していて、コウノトリの郷公園にもほとんど戻っていない。
もう、3回目の冬をすごしています。

出石川も災害復旧工事が盛んに行われているけれど、私は平気です。私たちコウノトリは、日本では人里で生活する鳥だもの。人間が近くで活動していても、重機が動いていても、車が通っていても、平気です。田んぼや水路にいろんな生き物がいっぱいで餌に困らなければ、私たちは一緒に暮らして行けるんです。

放鳥と野生復帰

執筆 稲葉一明   掲載 2007年11月24日 19時01分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる
秋の行楽シーズン、コウノトリの郷公園は今日もお客さんでいっぱい。
コウノトリたちも相変わらず、郷公園の周辺を飛んだり屋根の上に陣取って、観光客から、「あれは人形だろうか?、何や動いとるでえ、、」とか不思議がられたりしている。

コウノトリ文化館の屋根の上に止まると、大変よく納まってしまう。これは、J0399(段階的放鳥 2007年9月山本から放鳥)メス 2005年4月8日生まれ J144×J168(Vペア,豊岡)。放鳥しても郷公園に戻ってきて定着しているようだ。



こちらは、J0001(段階的放鳥 2006年7月巣立ち) オス 2006年5月18日生まれ J305×J273(Wペア)。ここで生まれて、巣立ちとともに自由に飛べるようになったものの、与えられる餌に完全に頼っているようである。



安全で楽に餌が採れる状況であれば、そこに定着するのは、野生動物でもごく自然なことといえると思うので仕方がない。別にこいつらがけしからんわけではない。楽に生活できて、仲良くけんかして、そして郷公園を訪れる人たちにも楽しんでもらえているのだ。ただ、野生復帰プロジェクトとしては好ましい状況とはいえないだろう。



しかし、こんなコウノトリばかりではない。
J0363 メス(自然放鳥 2006年9月23日 大磯河川敷から放鳥) 2003年4月26日生まれ J044×J102(Rペア)。このお嬢さんは、たくましく生きている。与えられる餌なんか当てにしていない。郷公園にも戻らない。


東浦ビオトープや小坂田んぼなどで自立している。もう1年以上経ちました。彼女はえらいと思う。先日も小坂田んぼでバッタなどを食べていました。割と食い放題みたいです。

ツルとカメ

執筆 コウノトリ市民研究所   掲載 2007年11月14日 21時30分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる

9月終わりの六方田んぼ河谷放鳥拠点ビオトープ、7月末に百合地人工巣塔から巣立ったコウノトリの幼鳥が、エサとりに夢中になっていました。すぐに母親コウノトリもやってきて、親子そろってのエサとりです。

ダイサギが同じ場所でエサをとっていました。コウノトリがくちばしを水中で左右に振りながらエサを探すのに対し、ダイサギは水中の獲物(えもの)の動きを目でしっかり追い、ここぞという一瞬にくちばしを水中に突っ込み、確実にエサを捕らえることができます。コウノトリのエサのとり方は、サギに比べてたいへん効率が悪いのです。

幼鳥がようやく何か見つけました。丸くて黒いかたまりのようなものです。くちばしでつかんで、何度もくわえなおしては水の中に落とす行動を繰り返します。エサとして食べられるものなのか、幼鳥にはまだ分からない様子でした。

観察時には、結局この黒いかたまりの正体が分からなかったのですが、後で写真を拡大してみたらカメの子供であることが分かりました。体の特徴から、外来種のミシシッピアカミミガメであることも分かりました。

昔の但馬ではコウノトリのことをツルと呼んで大事にしてきました。「鶴は千年 亀は万年」と言われ、長寿を象徴するおめでたい生き物とされています。そのツルがカメを食べようとしているのが面白いです。しかも、そのカメが外来種であるところに、現代の自然環境の実態を見ることができます。

幼鳥はさんざんカメの子をくちばしでもてあそんでいるばかりでしたが、見かねた母コウノトリがそれを横取りして、一瞬でパクっと飲み込んでしまいました。横でその様子を見ていた幼鳥は、自分が捕らえたものが食べられるエサであることを、このとき学習したのかも知れません。

野で暮らす親子コウノトリ、飼育員のエサだけに頼るケージのコウノトリとは違ったたくましさが求められます。様々な経験をつみながら、野生で生きる力が育ってゆきます。
(写真はクリックで拡大します)

文・写真 コウノトリ市民研究所 高橋 信

巣立ち直前

執筆 稲葉一明   掲載 2007年07月26日 21時50分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる
巣立ち直前
 本日仕事の関係で、夕刻現地へ赴くことができた。もう巣立っているかと思ったがまだ粘っている。親も待ちきれないのか雛を置いてどこかへ行ってしまった。聞くところによると、夜も巣に戻らず雛だけで夜を明かすこともあるようだ。












 雛に粘られて大変なのは報道陣と郷公園関係者、連日張り付いている。報道各社は地元だけでなく神戸や大阪のほうからも応援に来ているらしい。ご苦労さんなことである。日曜日になれば参議院選挙があるし、8月2日にはすぐ横で花火大会がある。それらを考えると明日巣立ちという可能性が高い。



 
 コウノトリたちはなぜかそのあたりは周りの期待に応えてくれることが多いのだ。ここまで引き伸ばし、これまでもかなり報道されている。本番でのタイミングを外さずに巣立つかどうか、本日の様子から行くといつでも大丈夫、後はひよこの勇気だけであろう。




 明日巣立つと僕はそう思うのです。明日は僕は見に行けないし、あさっての土曜日まで粘ってくれると見に行けるのですがね。 排泄シーンも撮れました。








巣立ち間近

執筆 稲葉一明   掲載 2007年07月16日 21時30分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる
5月19日に生まれたひよこもすっかり大きくなって、もう巣立ち間近。

お父さんが近くの電柱にとまって速く飛んで来いと巣立ちを促しているようだよ。



お母さんが戻ってきました。





吐き出した餌をもらっています。あんまりたくさん吐き出したようには見えなかったよ。

18日から20日ぐらいに巣立つのではないかと予想されています。

たくさんの報道陣が巣立つのを待ち構えていたよ。

豊岡盆地のコウノトリ

執筆 稲葉一明   掲載 2007年05月19日 22時50分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる

 放鳥コウノトリも、最近は豊岡盆地各地で見られるようになって、結構普通の風景になってきたような気がする。

 5月12日に赤石の巣篭もりを見に行った。前回報告したJ384とJ389の若いペアは、3つ産卵したのだが、どうも無精卵だったようで、本日19日時点では孵化は絶望である。12日の時点ではまだたくさんのマスコミの方々が期待を込めて誕生を待ち構えている。
気になるのか、市長の奥様もこられていた。

 野上の増殖センター前のビオトープに行くと、2羽のコウノトリがたたずんでいた。ここでは僕はトンボのほうが気になるので、シオヤトンボの写真を撮った。


 野上をあとに六法田んぼのほうに行ってみると、河谷の田んぼでJ275がたたずんでいた。田植えの真っ最中の豊岡盆地。コウノトリが苗を踏みつけるので、昔はぼわれていたのだが、今では理解が進んだことや、大規模機械化が進んで、細かいことは気にしなくなったのか、コウノトリをぼう姿は見られなかった。そう、昨年この地区で放鳥が行われたとき、地域の代表の方からコウノトリ大歓迎との高らかな宣言もあった。


 次に沖加陽東浦ビオトープに行くと、相変わらずJ393がいた。畔でたたずむ姿は美しい。





 今日の午前中、野上のビオトープを覗いてみたら、J362がドジョウやオタマジャクシを食べていた。もう、豊岡盆地では郷公園に行かなくても普通にコウノトリを見れるようになったと思う。


 ハチゴロウを探して、やっと会えたときのうれしさと、今は少し違ううれしさがある

J384とJ389の巣篭もり

執筆 稲葉一明   掲載 2007年04月14日 16時47分   カテゴリ たじまのしぜん » こうのとり

本文を開く
本文を閉じる
ハチゴロウとJ990がいなくなった野上の増殖センターにJ384とJ389が即座に乗り込んできたことは先月書いたが、このカップルはまだ2歳で(もうすぐ満3歳)、産卵するには若すぎる、記録では3歳でも早いほうと言うことなのだが、なんと産卵して巣篭もり状態になっている。

はじめのうちは、増殖センターの西の電柱に巣を作り出して、感電してはいけない、停電の原因になるとのことで巣を撤去され、個人で作られた人工巣塔に巣材を移動するも、そこには作らずに赤石の人工巣塔に営巣しだした。

赤石というところは、5年ほど前という早い時期から田んぼに魚道をたくさん設置して、冬季湛水水田やコウノトリ育む農法にも取り組んでおり、昨年からはドジョウの養殖も始めた地域で、魚道から上った小魚をハチゴロウが食べたりしていて、コウノトリプロジェクトでは先進地である。

この場所を選んで巣篭もりをするという、いつも思うのだが、コウノトリたちは、人間側の期待に沿った行動を、時には期待以上の行動をしてくれることが多い。

若すぎるカップルであるが、オス、メスともに抱卵に熱心であるようだ。教えてもらっていないので本能に基づいた行動なのだろうが、大したものである。

雛がかえったら、すごいことであるが、今の時点ではあまり期待しないでおこう。

一番上へ
サイドナビ
サイトマップ